リレーに限らず、モーター、ソレノイド等のコイルを駆動するときの「スナバ回路」の働きを考えてみる。
コイルの性質を簡単に言うと「電流は流れ続けようとする」ことがある。
(コイルにはエネルギーが溜まる、といっておこう。)
コイルの電流をスイッチで切ろうとすると、その電流は流れ続けようとしてコイルの両端に電圧が発生する。
当然、電流を切ろうとした時にコイルのプラスだった場所はマイナスになり、マイナスだった場所はプラスになる。
要するに、一瞬にして極性は反転するわけだ。
しかも、同じ電流が流れ続けようとするところを遮断するのだから、P=V・I の式から分かる通り、電圧が上がる。
この逆向きで発生するエネルギーを「逆起電力」と言い、このパルス状の電圧は非常に高くて、時間は非常に短い。
コイルの特性により異なるが、小型リレーでも電源電圧の数倍から10倍程度は出る。
(普通のテスターでは観察できない。)
このままでもスイッチでコイルの電流を切ることは出来る。(美しいスパークが見られることだろう。)
このときスイッチの接点には、電源電圧に逆起電力の電圧(逆起電圧)が加わって電流を遮断することになる。
接点の寿命が短くなるし、スイッチがICなど電子回路ではパルス波形がノイズにもなって特に問題になる。
そこでコイルの「逆起電圧」を抑えることが必要となってくる。
一般には、直流回路ではダイオード、交流回路にはコンデンサと抵抗を用いた「スナバ回路」を構成しコイルに
接続する。 (コンデンサと抵抗のスナバ回路は直流回路にも利用できる。)
注意しなければならないこともある。
「スナバ回路」を組み合わせたコイルは、動作時間がミリ秒(ms)単位で遅れる。
遅れる理由は、下枠内の「逆起電力A」を参照。
電気の用語「逆起電力」というものには二種類ある。 といっておいた方がいいかもしれない。 次のAとB。
A 一つはここに出てきた「コイルの電流を切ろうとした時に、流れ続けようとして加えた電圧の逆向きの
電圧が発生するとこ。」 コイルの電流を切ろうとした時は逆向きの「発電機」になる。 まさしく逆に起きる
電力だ。
----------------------
B もう一つは電流が流れている「物」に常に発生している「電圧降下」と同じ向きのものも「逆起電力」という。
これは、教科書にも書いてあるようだ。 ここでいう「物」にはコイルも含まれ、抵抗、ランプ・・・何でもそうだ。
こやつの説明がちょっと厄介だ。 「逆に起きる電力」というより、電源から供給される「電力を消費する」側で、
電源と同じ向き(極性)に同じ電圧がかかっている、と言う事だけだ。 (ようするに、力学の「力のつりあい」
がとれていると同じ事を考えたい訳か?)
----------------------
修理現場では「電圧降下」だけあればいい。 このBの考え方の「逆起電力」は必要ない。
私の40年間の修理でも一度も使わないし、制御盤とかロジックICの基板の設計でも必要なかった。
でも、明日使うかも・・・
数学上(物理学上)ないと困るか?
紛らわしいから名称を変更したほうがいいと考えるが、いかがか?
後者のBの「逆起電力」は、考え方から「順電力」みたいな呼び方でもいいのでは?
|
下で使用した波形図は、説明し易く書いた。 実際は様々な電気的要素があるため、複雑な波形になる。
|